漫画

秦の大将軍について

キングダムで信・王賁・蒙恬は大将軍になれますか?(Yahoo!知恵袋) http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11162587416無粋な歴史の話をすると、そもそも秦に大将軍の官がなかったんじゃないかという深刻な疑いがありましてな。『通典…

『仙術士李白』

葉明軒『仙術士李白』(角川コミックス・エース)が出ていました。台湾角川の電子雑誌『FORCE原力誌』で連載中の葉明軒『大仙術士李白』の日本語版です。 ちなみにComicWalkerで最新話が読めたりします。 http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_TW01…

「向」の読みについて

またぞろ『キングダム』をタネに話を広げてみます。 宮女キャラに「向」というのがおりますね。「こう」と読まれているのは、ご存じのとおりです。漢和辞典を引けば分かりますが、「向」の読みは、呉音が「コウ」で、漢音が「キョウ」です。 中国の人名の読…

「王子に譲位」

『ヒストリエ』、言葉にできない(ヤマカム) http://yamakamu.com/archives/4399196.htmlここの解釈が正しければ、例のマケドニア将棋の「王子に譲位」とかいうルールが伏線として機能するわけだな。 読んでるときには全く気づかないが、後になって振り返る…

『長歌行』その3

夏達『長歌行』の5巻と6巻が同時に刊行されてますね。 われらが女主角の李長歌も朔州・突厥・契丹と流れ流れて、唐土に立ち戻り、洛陽は流雲観編です。 流雲観は架空の道観(道教寺院)なのですが、その名はおそらく崑崙山の西王母の宮殿とされる「金丹流…

「毐国」

原泰久『キングダム』に嫪毐の「毐国」が登場しています。 結論からいうと、この「毐国」を国名として扱うのは、間違いなんじゃないかと思います。 『史記』始皇本紀の始皇八年の条から関係部分を抜き出してみます。 「嫪毐封為長信侯。予之山陽地,令毐居之…

『長歌行』その2

小ネタです。相変わらず歴史サイドからの重箱の隅エントリですが、別に真面目に糾弾コーナーとかしてるわけではないので、気楽に読み流して下さい。 夏達『長歌行』4巻P51 「隋の建成姫」とやってしまってるのですが、この人は義成公主でしょう。隋の宗室の…

盗跖

盗跖または盗蹠は、『荘子』盗跖篇に見える人物で、魯の柳下恵の弟とされ、九千人の手下を率いて天下を横行した大盗賊といわれる。春秋時代の伝説的人物である。 ところが『史記正義』には「蹠は黄帝のときの大盗の名である」との異説を紹介している。また応…

李信と章邯と心強さと

http://museru.digi2.jp/g02/g02.html 『史記』を見るかぎり、李信と章邯のあいだに深い関係を見出すことはできないのだけれど、交際がなかったという証拠もやはり見出せないわけで、そこは「繋がりを求めてしまうのが人の性(サガ)なのさ」と嘯けばいいわ…

『達人伝』

王欣太『達人伝〜9万里を風に乗り〜』の第一話が公開されているようです。 http://webaction.jp/lineup/70/ 冒頭の鯤のエピソードは、『荘子』逍遥遊篇から。 「抑志而弭節兮」の歌は、屈原「離騒」の一節です。 古代中国っぽい独自の世界らしく、荘丹・玄…

『三蔵法師の大唐見聞録』

諏訪緑『三蔵法師の大唐見聞録』(朝日新聞出版) 『玄奘西域記』の続編となる漫画です。玄奘が西天取経より帰国した後の冒険譚となっています。以下はキャラバレ的な何か。 ▼尉遅洪道(窺基法師)は、尉遅敬徳の子または甥とされていて、玄奘の訳経を助けた…

亦巴哈とか只魯古素とか

亦巴哈という金国の軍人は史書に知られていないのですが、チンギス・カンがケレイトの王罕(オン・ハン、トオリル)を打倒したとき、王罕の弟の娘を妻に迎えていて、その女性を亦巴哈(イバガ・ベキ)といいます(『元朝秘史』巻7)。チンギスの四男トゥルイ…

呂伯奢は戦わない

『修羅の門』というかつて一世を風靡した中二格闘漫画があるのですが、現在『月刊少年マガジン』のほうで十数年のブランクを経て『第弐門』という名の2部をやってます。さいきんは呂布だの呂蒙だの蘭陵王高長恭だのが出ています。ここでは詳しく解説しませ…

河了貂の実在について

追記:↓エイプリルフール記事でした↓m(_ _)m 『元和姓纂』巻六によると、河了氏は三苗の後裔であり、巴賨の梟鳴の子孫であるとされる。『華陽国志』巴志によると、周の慎王五年秋に秦の大夫張儀・司馬錯・都尉墨らが蜀を討ったとき、巴の河黒卑が秦に帰順し…

成恢とか汗明とか

成恢は『戦国策』の魏策二「楚王攻梁南」と韓策三「韓氏逐向晉於周」に登場する。事跡のよく分からない人だけど、おそらくは韓の人ではないし、紀元前4世紀後半に活動した人なので、時期が1世紀くらいずれている。 汗明は『戦国策』楚策四「汗明見春申君」…

これは強調して強調しすぎるということはないだろう

『紫色のクオリア』のマンガ版が出てる! 紫色のクオリア 1 (電撃コミックス)作者: うえお久光,綱島志朗出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス発売日: 2012/02/27メディア: コミック購入: 4人 クリック: 96回この商品を含むブログ (20件) を見るゆか…

『長歌行』

『誰も知らない 〜子不語〜』の夏達が歴史ものを描いているようです。1巻が出ていたので買って読んでみました。『長歌行』とは漢代の楽府に同名の題がありますが、こちらの漫画のほうは唐初を舞台にした歴史女侠ものです。主人公は玄武門の変で李世民に殺害…

臨武君

臨武君は実在する。『戦国策』楚策四や『荀子』議兵篇に登場する。戦国時代の楚の封君は春申君が最も有名だが、邸陽君・鄴君・射叴君・喜君・鬲君・顎君・袪陽君・羕陵君・鄍君・彔君・䔖君・鄱君・陽君・荇君・俈陵君・尚君・新野君・金君・平夜君・襄君・…

『キングダム』アニメ化

ヤングジャンプ連載『キングダム』TVアニメ化決定!!(ひまねっと) http://himarin.net/archives/5345030.htmlはてぶの百字ではコメントが書ききれなかったのです。 心は中二の中年中国史オタとしては、この中二中国史漫画がアニメ化することはもちろん喜…

歯偏と馬偏

いまだに『キングダム』の秦の怪鳥「王騎」で検索かけてウチに来る人いるので、話題にしておきます。(というのは枕で、自分が話題にしたいだけなのですが……。) 秦代に実在したのは「王齮」という人物で王騎ではありません。王齮については『史記』の秦本紀…

青木朋『三国志ジョーカー』の完成度が半端なかった件

三国志ジョーカー 1 (ボニータコミックス)作者: 青木朋出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 2010/12/16メディア: コミック購入: 5人 クリック: 56回この商品を含むブログ (4件) を見る黒スーツにネクタイ、紫煙をくゆらせ、こましゃくれたダンディズムを漂わせ…

時代は侵畧されている

「働」の略字に「仂」というのがあってなー。時代は、働かない「WORKING!!」より、働く「イカ娘」でゲソ。

滝口琳々『新☆再生縁〜明王朝宮廷物語〜』

『江東の暁』や『北宋風雲伝』の滝口琳々(姉妹)による新作マンガ1巻目が出ていたので、読んでみました。無実の父を救うべく男装の麗人が科挙に及第して北京の宮廷にもぐりこみ、陰謀に巻き込まれていくといった展開。本作のもとになった『再生縁』は、清…

ネタばれ?ちがいます

いま『キングダム』でやってんの、このへん。 人物だけじゃなくて、地名も架空のものが混じってるから、分かりにくいけど。「流尹平野」ってどこよ。 廉頗はいつ死んだか分からない人だから、好きに料理できていいですね(爆)。

『キングダム』の城壁

最近攻城戦をやってるのでとくに目立つが、『キングダム』に描かれる城壁はいずれもレンガ積み。 たとえば10巻153頁のこのシーン。 明らかに版築ではなく、レンガ積みの城壁。 このような後代の実際の城壁をモデルにして、より派手にヴィジュアル重視で描い…

『シュトヘル』の別克帖児

シュトヘル 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)作者: 伊藤悠出版社/メーカー: 小学館発売日: 2009/10/30メディア: コミック購入: 14人 クリック: 134回この商品を含むブログ (66件) を見る『シュトヘル』2巻にモンゴルの将軍ベクテルが出てきましたね。 この人…

三百将はたぶんいない

▼秦軍の兵種による分類 材官(歩兵) 騎士(騎兵) 軽車(車兵) 楼船(水兵) ▼秦軍の材官(歩兵)の編制 伍(5人)といい、伍長一人を置く。 什(10人)といい、什長一人を置く。 屯(50人)といい、屯長一人を置く。 百(100人)といい、百将一人…

俺は池田はどうでもいいんだが

http://blog.livedoor.jp/insidears/archives/51997223.html 俺はかじゅ先輩に踏まれたい派なので、池田のことは本当はど〜でもいいんだが、 池田の魅力は「ヤムチャ」とか「8万点振ったねこ」とかにあるのではなく、 「華菜ちゃんは図太いんだ!」 「点差…

『エデンの檻』の檻はどんな檻(世界)なのか

最近の週刊少年誌3誌では、マガジンがいっちゃん面白いですね。(というか最近のジャンプのつまらなさは異常!) というわけで、マガジン注目株から山田恵庸『エデンの檻』を取り上げます。

竭氏・肆氏

ネタはあるけども、書く元気がないので、原泰久『キングダム』の重箱の隅つつきでごまかす。しかも今さらの話。 (始皇九年四月)衛尉竭・内史肆・佐弋竭・中大夫令斉等二十人皆梟首。 (紀元前238年4月)衛尉の竭・内史の肆・佐弋の竭・中大夫令の斉ら二十…