『長歌行』

『誰も知らない 〜子不語〜』の夏達が歴史ものを描いているようです。1巻が出ていたので買って読んでみました。『長歌行』とは漢代の楽府に同名の題がありますが、こちらの漫画のほうは唐初を舞台にした歴史女侠ものです。主人公は玄武門の変で李世民に殺害された李建成の娘の永寧公主・李長歌で、彼女の復讐のゆくえが物語の主線となっています。前作の『子不語』とは打って変わったピカレスクな雰囲気が漂っていますね。
さて無粋なお約束として、歴史面からツッコんでおきます。→まず主人公の李長歌という女性は史料では確認できません。まあ架空の人物ですね。李建成や李元吉の息子たちは玄武門の変のときに全員殺されているのですが、娘については玄武門の変の後にも生きていた人が確認できるので、おそらく女子は殺されていません。
それから朔州刺史の公孫恒とか行軍都督の司馬康とかいう人は実在しません。突厥に阿史那隼や土喀なんて人もいませんね。初唐のころの朔州が突厥にたびたび攻撃をうけていたのは本当ですが。登場人物中で実在していた有名人は今のところ李世民・房玄齡・杜如晦・魏徴・尉遅敬徳・李淳風くらいですかね。
あと官人に対して「〜大人」と呼びかけているのですが、「〜大人」という呼び方は清代以降の呼び方ですので、唐代の話に出てくるのは不自然です。このころなら実際には官名で呼んでいたと思います。

と、茶々はこのくらいにして、夏達の美麗な絵筆が物語をどこに導くのか、今後楽しみですね。

長歌行 1 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)

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