2015-01-01から1年間の記事一覧

始皇帝がらみの新史料らしい『趙正書』について

北京大学蔵西漢竹書(北大漢簡)のひとつ『趙正書』を訳してみました。ネットに落ちてたものをテキトーに直しただけなので、正確さは全く保証しません。 むかし秦王趙正が天下に出遊し、帰る途中に白人(柏人)にいたって病にかかった。〔趙正の〕病は重く、…

秦の咸陽と天の迷宮

本邦における秦代研究者の第一人者である鶴間和幸氏が奇妙な説を唱えているので、素人なりの批判をしておきたいと思います。 宇宙と地下からのメッセージ 〜秦始皇帝陵の謎〜で、 http://www.d-laboweb.jp/event/report/121011.html 咸陽宮はペガスス座、閣…

「始皇帝と大兵馬俑展」

とりあえず、頼まれもしないのに(余計なことを)、トゥギャッターにまとめておきました。すみません。 http://togetter.com/li/906997さて、気を取り直して、以下は個人的すぎる感想です。 ▼総じて統一前の文物のほうが興味深かったですね。というか兵馬俑…

桑乾王ふたり

「桑乾」というと、賈島の「度桑乾」や丁玲の『太陽は桑乾河を照らす』の河が想起されるだろうか。しかし以下は、桑乾河とは直接関連しない南北朝時代の小話である。『魏書』巻21上献文六王伝上に「曄,字世茂,衍封為桑乾王,拜散騎常侍,卒於秣陵」とある…

あざな開山

小ネタです。 「嶠字開山」(『晋書』巻75列伝第45「王嶠伝」) 「殷嶠字開山」(『旧唐書』巻58列伝第8「殷嶠伝」) 嶠という名の人があざなを開山というとは必ずしも限らないが、あざなを開山という人は名が嶠であるという法則があったりしないか。(正史…

南昌海昏侯墓の発見

http://ex.cssn.cn/lsx/kgx/201511/t20151105_2560206.shtml http://www.jx.xinhuanet.com/news/focus/2015-11/05/c_1117045911.htm http://news.xinhuanet.com/shuhua/2015-11/13/c_128424359.htm http://www.chinatimes.com/cn/realtimenews/2015111300454…

始皇帝と大兵馬俑展メモ

http://heibayou.jp/ https://twitter.com/heibayou2015 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1732 http://www.museum.or.jp/modules/topNews/index.php?page=article&storyid=3489「立射俑」「将軍俑」「軍吏俑」「跪射俑」「馬丁俑」「雑…

『仙術士李白』

葉明軒『仙術士李白』(角川コミックス・エース)が出ていました。台湾角川の電子雑誌『FORCE原力誌』で連載中の葉明軒『大仙術士李白』の日本語版です。 ちなみにComicWalkerで最新話が読めたりします。 http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_TW01…

昌平君「熊啓」説

秦の始皇帝に仕え、後に楚王となった昌平君の事跡はたいしたことは分かっていません。そもそも「昌平君」というのも封号であって、本名も知られていないのです。まずは司馬遷『史記』秦始皇本紀第六の記述から見ていきます。 「(九年四月)長信侯毐作亂而覺…

キトラ古墳天文図メモ

明日香村のキトラ古墳石室の天井に描かれていた天文図が、古代中国での観測に基づいていたとする研究について報道がありました。 キトラ古墳:天文図は紀元前後中国で観測された星の可能性(毎日) http://mainichi.jp/select/news/20150716k0000m040084000c…

『バケモノの子』

細田守監督の新作『バケモノの子』見てきました。

アメリカの甲骨文字

Ancient Chinese script may prove Asians discovered America 3,300 years ago(Daily Mail Online) http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-3152556/イギリス『デイリー・メイル』紙による面白ニュース。アメリカニューメキシコ州アルバカーキの…

「向」の読みについて

またぞろ『キングダム』をタネに話を広げてみます。 宮女キャラに「向」というのがおりますね。「こう」と読まれているのは、ご存じのとおりです。漢和辞典を引けば分かりますが、「向」の読みは、呉音が「コウ」で、漢音が「キョウ」です。 中国の人名の読…

「王子に譲位」

『ヒストリエ』、言葉にできない(ヤマカム) http://yamakamu.com/archives/4399196.htmlここの解釈が正しければ、例のマケドニア将棋の「王子に譲位」とかいうルールが伏線として機能するわけだな。 読んでるときには全く気づかないが、後になって振り返る…

梁昭明太子墓

2012年から南京市博物館考古隊の手で発掘が行われていた南京市栖霞区燕子磯鎮太平村の獅子衝南朝陵墓ですが、これがどうも梁昭明太子墓だったようです。昭明太子は梁の武帝の長男で、『文選』の編者として知られている人です。 陵墓からは「普通七年」、「中…

「子貴母死」と「立子殺母」と

中国の南北朝時代の北魏には、君主の後嗣となる嫡子が立てられると、その生母を殺害する「子貴母死」という制度がありました。『春秋公羊伝』にみえる「子以母貴、母以子貴」をもじって作られた史称ですが、北魏の特異な制度を端的に表現しています。また別…

后の実家を滅ぼす帝王?

田中芳樹『銀河英雄伝説』にパウル・フォン・オーベルシュタインというキャラクターがおりまして、冷徹怜悧な権謀家で常に合理的すぎる「正論」を吐くために誰からも嫌われながら、我が身を省みない無私の姿勢をみせる人物なのですが、かれが次のような台詞…

皇族かもね

以下は思いつきなので、あまり真に受けられても困るんですが。 (始皇九年四月)衛尉竭・内史肆・佐弋竭・中大夫令斉等二十人皆梟首。 (紀元前238年4月)衛尉の竭・内史の肆・佐弋の竭・中大夫令の斉ら二十人は、みなさらし首にされた。 『史記』秦始皇本紀…

唐の使節、アッバース朝へ

唐朝楊良瑶曾下西洋(中国社会科学网) http://sub.cssn.cn/zgs/zgs_gd/201503/t20150331_1568624.shtml 明の鄭和の西洋下りに遡ること600年あまり、唐代に西洋下りをした人がいたという話です。 その記録は「唐故楊府君神道之碑」といいます。1980年代に陝…

知恵袋での戦果

最近の戦果を貼ってみるなど。こうしてみると、確かに中国史好きっぽく見えるな。某所での裏の顔などないもののように。

白アリスの反乱

『魏書』巻3太宗紀 (神瑞二年三月)河西飢胡屯聚上黨,推白亞栗斯為盟主,號大將軍,反於上黨,自號單于,稱建平元年,以司馬順宰為之謀主。夏四月,詔將軍公孫表等五將討之。河南流民二千餘家內屬。眾廢栗斯而立劉虎,號率善王。 『魏書』巻105天象志一 神…

落合淳思『殷─中国史最古の王朝』(中公新書)

アクの強い著者ではありますが、図式的に分かりやすいうえに、新説が多くてセンス・オブ・ワンダーな著でありました。以下は注目点。 ▽地方領主を介した間接統治の領域が広く、殷の王権は強くなかった。 ▽武丁が殷代中期の混乱を収めて、王朝を再統一した。 …

唐の「造船大使」墓誌の発見

西安發現唐“造船大使”墓誌 出現多个“則天新字”(中国社会科学网) http://www.cssn.cn/kgx/kgdt/201503/t20150325_1559678.shtml 唐の簡州長史で、対高句麗戦のさいに「楊州道造船大使」をつとめた唐遜(?-699)の墓誌が西安牌林に収蔵されたそうです。則天…

7世紀初頭の郡県制

次のDG-Lawさんの記事を読みながら、記事の主旨と別のところで唸ってしまいました。 受験世界史悪問・難問・奇問集 ver.2015 その3(国立大)&おまけ(nix in desertis) http://blog.livedoor.jp/dg_law/archives/52257971.html名古屋大学の問題から。ど…

中国のネクロブッダルパ

オランダの博物館員が中国の加漆肉身像をCTスキャンにかけたニュース http://www.gizmodo.jp/2015/02/ct.html ホトケ様のスケルトンが黄金色に輝いて、後光が差していないのが不思議なくらいです。http://karapaia.livedoor.biz/archives/52185454.html の…

『長歌行』その3

夏達『長歌行』の5巻と6巻が同時に刊行されてますね。 われらが女主角の李長歌も朔州・突厥・契丹と流れ流れて、唐土に立ち戻り、洛陽は流雲観編です。 流雲観は架空の道観(道教寺院)なのですが、その名はおそらく崑崙山の西王母の宮殿とされる「金丹流…

謹賀新年

旧年中は更新も稀な弊亭にお越しくださり、たいへん有難うございます。 今年こそは去年以上に働こうと、心を竭して酔いの醒めるまで考えておりますので、 どうぞお見捨てなきよう宜しくお願いします。 では皆様よいお年をお迎えください。 上樓迎春 大家歡飲…