読書

『人間の手がまだ触れない』

ロバート・シェクリィ『人間の手がまだ触れない』(ハヤカワ文庫) 1950年代に編まれた短編集。寓話的SFばかり13篇。

『シルクロードと唐帝国』

森安孝夫『興亡の世界史05 シルクロードと唐帝国』(講談社) まず異色の歴史概説書と評しておきます。ネット上の書評では序章の斜め前ぶりが人気ですが(笑)、なんでもソグドにからめていきそうな勢いの本編のほうも、かなり素敵です。ソグド人が商業だけ…

『アジア主義を問いなおす』

井上寿一『アジア主義を問いなおす』(ちくま新書) 「アジア主義」と「親米」が両立しうるか?1930年代の教訓から探る本。 この本の結論から言うと、アメリカの関与なきアジア主義は蹉跌を免れないという方向。対米対抗的なアジア主義を排して東アジア共同…

「燭怪」

『オール讀物』2007年2月号の田中芳樹「燭怪」ですが、短編としてそれなりでした。「人皇王流転」のときには、もしかして作家・田中芳樹は死んだのか?とファンとしてイタく心配していたので、田中氏らしさ(色)が確認できて良かったです。中国歴史小説として…

『君当に酔人を恕すべし』

蔡毅『図説中国文化百華017 中国の酒文化 君当に酔人を恕すべし』(農文協)の第一章からメモメモ。 造酒の伝説 酒星造酒説(酒旗星というお星様、竇苹『酒譜』「天に酒星有り、酒の作らるるや、其れ天地と并べり。」) 黄帝造酒説(葛洪『抱朴子』に黄帝が…

中野美代子『眠る石』

中野美代子『眠る石−綺譚十五夜』(ハルキ文庫) 歴史短編15話。 東南アジア・中国・中央アジア・西欧の旧所名跡から霊感を受けて書かれたかのごときショートショート集。 第七夜「ウェストミンスター・アベイ」と第八夜「シャトー・ド・ポリシー」に登場し…

イーガン『ひとりっ子』

グレッグ・イーガン『ひとりっ子』(ハヤカワ文庫) 第三短編集。短編7本。

『憲法九条を世界遺産に』

太田光・中沢新一『憲法九条を世界遺産に』(集英社新書) 宮沢賢治から読み起こして憲法を考えるという着想は面白い。ただ議論としては、自分の持論とは合わないなと再確認してしまった。僕も、九条護憲のスタンスなんだけど、九条がドンキホーテとも高すぎ…

『宇宙を読む』

谷口義明『カラー版 宇宙を読む』(中公新書) 現在分かっている宇宙に関する概説書。内容も平易で、写真図版が多い。冥王星が惑星から矮惑星に格付けを落とされる直前の時期に書かれた本なので、そこらの書き方が微妙で、今となっては苦笑を誘う。

野尻抱影『星と伝説』

野尻抱影『星と伝説』(中公文庫) 星の民俗本。夜空に輝く星の伝説を東洋から西アジアからヨーロッパから南洋からひたすら集めまくって覚え書きした本。星の和名もたくさん出てくる。北極星は「ネノホシ(子の星)」「キタノヒトツボシ」、北斗七星は「シソ…

『霧の訪問者』

そういや軽井沢に住んでおられたんでしたね。中身はゴシック・ホラーでも何でもなく、特異な趣味をネタとして笑いのめすギャグ噺と化している。あとはアメリカ暗黒史…といってもさほど濃くはない。

『グリュフォンの卵』

マイクル・スワンウィック『グリュフォンの卵』(ハヤカワ文庫) SF短編集。ファースト・コンタクトものと時間ものがやや多いが、多岐にわたるテーマを完成度高く仕上げる職人芸が見られる。自分の好みは、「ギヌンガガップ」、「スロー・ライフ」、「ティ…

『チンギス・カン』

白石典之『チンギス・カン "蒼き狼"の実像』(中公新書) 考古学からみたチンギスの本。テーマとして、大オルドはアウラガ遺跡であるというこの人の自説と、鉄は大事なのよということが言いたいのであろうと思われる。僕個人としては、チンギス以前のモンゴ…

『楼蘭王国』

赤松昭彦『楼蘭王国 ロプ・ノール湖畔の四千年』(中公新書) 序章 第一章 史記の中の楼蘭 第二章 消された楼蘭王国 第三章 ロプ・ノールをめぐって 第四章 スタインの登場 第五章 ミイラが語る楼蘭前史 第六章 ガンダーラ語の文書を読む 王はどこにいたか−…

竹村牧男『インド仏教の歴史』

講談社学術文庫。「大乗は仏説にあらず」…というか、僕らの知る仏教がほんらいの釈迦の教説とは全く別物であることがよく分かる本。というか、釈迦がもし現代に現れたら、おそらくカルト扱いされてると思うわ。老荘とかもそうだけど、純粋な思想はあまりに突…

『砂漠の惑星』

今年3月に84歳で逝去したポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの長編。ハヤカワで再刊されたのがありがたい。機械生命とのコンタクト。冒険アクションの要素も多少あり。レムはどうしてもソラリスの人なわけだが、この作品も人類と友好的でもなく、敵…

先頭の山羊

小林登志子『シュメル──人類最古の文明』(中公新書) 有畜農耕社会であったシュメルには、家畜の群れを管理するための去勢や「先頭の山羊」などの技術があった。 「先頭の山羊」とは、羊の群れを制御するさいに混ぜる山羊のことである。羊はおとなしいので…

『愛はさだめ、さだめは死』

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『愛はさだめ、さだめは死』(ハヤカワ文庫) SF短編集。アリス・シェルドン(ティプトリー・ジュニア)は、むかし勧められたことあったけど、あまり好みではなくて、あまり読んでいない。文体がどうも合わないという感…

『三国志 正史と小説の狭間』

満田剛『三国志 正史と小説の狭間』(白帝社)読了。 題名に相違して小説(演義)との比較は付け足しのような感で、内容はまじめな歴史学の本。三国志初心者にはオススメできないが、コアなファンに対していろいろ題材を提供してくれるのではないか。

森福都『琥珀枕』

森福都『琥珀枕』(光文社)読了。 アイテムとアイディアで勝負してるミステリー風味の連作短編集。 前漢の東海郡蘭陵県(現山東省棗荘市)が舞台で、神仙人鬼と犯罪入り乱れる珍しいつくり。 トリック・どんでん返しもさることながら、表題作ほか「悪」の魅…

『老ヴォールの惑星』

小川一水『老ヴォールの惑星』(ハヤカワ文庫)読了。中編4編。 この人の小説は、ぎりぎりのところで人間に対して甘く、ぎりぎりのところで未来に対して楽天的ですね。そういうところがいいのかなあ。 「ギャルナフカの迷宮」 思考実験ですね。まじめに考え…