『老ヴォールの惑星』

小川一水『老ヴォールの惑星』(ハヤカワ文庫)読了。中編4編。
この人の小説は、ぎりぎりのところで人間に対して甘く、ぎりぎりのところで未来に対して楽天的ですね。そういうところがいいのかなあ。
「ギャルナフカの迷宮」
思考実験ですね。まじめに考えたら、こんな刑務所がわりに合うわけがない。でもいちばん爽快な話ではあるかな。
表題作「老ヴォールの惑星」
しかし良く考えると、繁殖をおこなわずサラーハの特殊な環境で自然発生したヴォールたちは、どこかへ移住したとしても絶滅しか道が残されていないことに気づく。残るのは知識と経験だけ…か。まあ文明論的にいえば、そうした蓄積がつねに人間の社会をも支えてますけどね。
「幸せになる箱庭」
限られたリソースで無限に近い時間を遊んでたら、そりゃいつか飽きるでしょう。人間だったら、もっと貪欲に次を求めると思いますね。
「漂った男」
タワリは昇進しない罠。というのは冗談として、奇妙な漂流物語。