『憲法九条を世界遺産に』

太田光中沢新一憲法九条を世界遺産に』(集英社新書
宮沢賢治から読み起こして憲法を考えるという着想は面白い。ただ議論としては、自分の持論とは合わないなと再確認してしまった。僕も、九条護憲のスタンスなんだけど、九条がドンキホーテとも高すぎる理想とも全く思っていないので。
僕が歴史的な確信をもっていえるのは、五百年後に人類社会が存続しているなら、五百年後の人々がアメリカ合衆国や日本国や大韓民国に感じる思い入れは、現代の日本人が讃岐国甲斐国武蔵国に感じる思い入れと、さして変わらないレベルだろうと。現代の日本国憲法も戦国時代の分国法も荒っぽくいえば一緒だろと(笑)。現行憲法九条も、別にオーパーツではなくて、特定の歴史的産物として出てきた国際協調の要請にすぎず、主権国家の分立という現代の状況が消えれば、一気に古びて、かつて乗り越えられた理想にすぎなくなるだろうと思っている。
憲法九条が永劫のものだなどとは全く思わないし、世界遺産にして陳列するようなものでもないだろう。現代の改憲派に僕が与さないのは、現実と(実際にはアメリカの要請と)合わないからウチの看板(理想)を下ろしましょうという議論が、歴史的退行にすぎず、くそ莫迦らしいからだ。