「孔子も孟子も、デッチあげ」だって…

もうどこからツッコんだらいいのか分からないけど、こういう妄想に満ちた文章をナマで見るとすごいなと思う。
孔子も孟子も、デッチあげ(上)(心に青雲)
孔子も孟子も、デッチあげ(下)(心に青雲)
ツッコむべきどころは、文章中いくつもあるけども、一部だけにとどめる。

秦の始皇帝漢人でないことを冒頭に書いたが、彼もどうやらユダヤ人であった。秦とはそもそもバクトリア王国のことだと言われる。バクトリアがどれだけの地域を支配したか私にはまだよくわからないが、中央アジア一帯から現在の中国あたりに広がっていたのだろうか。この秦の歴史を書いた『秦本紀』という“歴史書(?)”は、アヤメネス・ペルシア史の漢訳だそうである。

秦がバクトリア王国のことって、どこから出てきた説かしらん?通説的には、バクトリア王国は中国史料上の「大夏」だけどね。それにバクトリア王国の支配者がなぜユダヤ人?ギリシア人でなくて?西洋で書かれて信じられている歴史もウソなのかな(笑)。それから「秦の歴史を書いた『秦本紀』という“歴史書(?)”」とか言っているところから見ても、このブログ主(hienkouhouさん)は『史記』を読んでないのは明らか。もちろん秦本紀は『史記』百三十巻のうちの一巻。「アヤメネス・ペルシア」ってのも、はじめて聞く呼びかた。ふつうは「アケメネス朝ペルシア」か「アカイメネス朝ペルシア」かどちらかだろうに。
これだけ短い一節だけでも、こんなに疑問点が…(苦笑)。だいたいこの文章全体からみても、ユダヤ人もギリシア人もトルコ人もぐちゃぐちゃだしね。

どうしてこのブログ主さんは、通説的理解も充分でないのに、異端の説を唱える人の本を一冊読んだだけで、こうもやすやすと通説を全否定してしまえるんだろうね。世界中の何千・何万という東洋史研究者をバカにする言動だって理解してるかしら。歴史の研究・考証の長〜い積み重ねをコケにしてるんだって分かっているかしら。
いや、言論は自由だし、異説を立てるのも自由だ。他人を嘲笑するのもいいさ。僕だって異説を立てたい誘惑によく駆られる。しかし、検証に堪えるだけの一定の水準を満たさないと、世間はまともに相手にしてくれないよ、永遠に。

まあ一昔前にも
「日本が創った超古代中国文明の謎」(史劇的な物見櫓−ヘンテコ歴史本閲覧室)
なんてのがあったし、こういう歴史を超えた妄想は絶えないんだろうけども。