アクの強い著者ではありますが、図式的に分かりやすいうえに、新説が多くてセンス・オブ・ワンダーな著でありました。以下は注目点。
▽地方領主を介した間接統治の領域が広く、殷の王権は強くなかった。
▽武丁が殷代中期の混乱を収めて、王朝を再統一した。
▽武丁のカリスマ的支配。武丁は甲骨の占卜の改竄によって、神秘性を演出していた。
▽「多子族」は王子の集団ではなく、軍隊を指す語。
▽王との擬制的関係として、地方領主を「子」「婦」と呼んだ。
▽婦好は女将軍ではなかった。武丁の側室の「婦好」と地方領主の「婦好」は別物で、軍を率いたのは地方領主のほう。(正直ここが一番びっくりした説でありました)
▽董作賓の分類による甲骨文字の「第四期」は、実は第一期と第二期のあいだの時期。
▽紀元前12世紀は戦争の少ない安定期。
▽祖己は狩猟を頻繁におこなって、王畿の諸都市に出向き、軍事力をデモンストレーションした。
▽一二間期(旧「第四期」)に自然神への祭祀が減少し、祖先神への祭祀が強まる。
▽殷末の文武丁や帝辛の時代に外敵が再登場し、戦争が再び増えた。
▽殷末の第五期には、すべての先王・先妣を祀る「周祭」がおこなわれていた。
▽殷の衰退は王畿内部の都市である盂の反乱が契機。
▽殷末の集権化の試みが地方領主の既得権益を侵してその抵抗を招き、王朝の土台を覆すにいたった。
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