『中国説話文学とその背景』

志村五郎『中国説話文学とその背景』(ちくま学芸文庫
著者の志村氏は、米プリンストン大学の数学者らしい。志村氏が五十数年かけて集めた中国の説話を、八年かけて一冊書き上げたと、本人が書いているので、趣味のライフワークの結晶めいてみえるのもむべなるかな。
『太平広記』からの引用が多いが、ほかにも多くの漢籍文献を渉猟しているのは、よく分かる。読みごたえがあるし、僕もかなりのんびりじっくり読んだ。
とくに唐代の説話が多く、唐については背景となる歴史解説もしっかりしているので、そちらからの興味で入るのもいいかもしれない。
女性がらみの説話や史話も多く、「掖庭の人々」や「悍室忌妻列伝」もなかなか面白い。