『中国美人伝』

陳舜臣『中国美人伝』(中公文庫)。久しぶりに読んだ陳舜臣。西施・卓文君・王昭君・皇后羊献容・薛濤・萬貴妃・竇妃の七人を取り上げる。『妖のある話』とかぶっている人物もいるが、より深く掘り下げている。西施・王昭君はまだしも知られているが、羊献容とか薛濤とか知らない人が多いのではなかろうか。陳舜臣氏の彼女たちへのまなざしは優しく、数奇な運命をたどった人々にも不幸な人がいない。というより不幸な人にしない。羊献容すら「短い一生だったが、晩年はしあわせであったといえるのではあるまいか」と評するわけだから、ほかが不幸になりうるはずがない。勘違いしそうになるが、これは歴史を素材にとったフィクションにほかならない。歴史短編七編だ。
とりあえず勉強になったのが萬貴妃(=万貴妃)再評価論の経緯。ははーん、なるほど。そういやどっかの骨董の人も「明は成化を見よ、清は乾隆を見よ」って言っていたものなあ。