歴史本として見た場合、お勧めできない。

春名徹『北京──都市の記憶』(岩波新書
少し調べれば分かるような記述ミスに満ちているので、シロートにはお勧めできない本です。

「燕は武王の弟、召公奭に与えられた。」(P3)
──召公奭は武王の弟じゃありません。(『史記』燕召公世家第四を見よ!)

「しかし召公は、武王の後を継いだ幼い周王成を補佐する立場にあったため周の都を離れず、」(P3)
「周の太保とはすなわち周王成を補佐した召公を意味する」(P5)
──なんですか?周王成って?周の成王のことを指しているのは文脈からあきらかですが、諡号なら成王と、周王に名を続けるのであれば、周王誦と書きましょう。

「やがて周が滅び、諸国は独立してあるいは戦い、あるいは連合し、中国の統一を目指すようになる。戦国時代である」(P7)
──戦国時代に入っても東周は滅んでません。

「すでに中国文化の影響を受けていた契丹は、耶律阿保機のもとに部族を統一し、九一六年には中国風に「神冊」と元号を建て、国名を遼と号していたが、」(P11)
──西暦916年の段階で耶律阿保機の建てた国は遼と号していません。あくまで国名は契丹です。

「明に続いて清もモンゴル(ジュンガル部)に対する戦争を続けなければならなかったので、」(P19)
──あのう、ジュンガル部はオイラトですけど……。

「明の永昌元年四月三〇日、農民軍は北京を撤退し、」(P20)
──この場合、永昌は明の元号ではなく、大順政権(李自成の政権)の元号ですよ。

第一章からこの調子ですから、あとは推して知るべしです。
歴史本としてはアレでも、観光ブックガイドとしてはありなのかなあ……?