王莽の頭

惠帝元康五年閏月庚寅,武庫火。張華疑有亂,先命固守,然後救火。是以累代異寶,王莽頭,孔子屐,漢高祖斷白蛇劍及二百萬人器械,一時蕩盡。
『晋書』五行志上

 西晋恵帝の元康五年(西暦295年)閏月庚寅、洛陽の武庫で火災が発生した。張華は反乱の発生を疑い、まず固守を命じ、その後に消火にあたった。このとき累代の異宝である王莽の頭、孔子の履、漢の高祖劉邦が白蛇を断った剣および二百万人器械が一時に焼尽した。
 孔子の履物や劉邦の斬蛇剣はともかくとして、王莽の首級が累代の異宝として西晋まで伝わっていたのである。『後漢書光武帝紀上に「(更始元年)九月庚戌,三輔豪桀共誅王莽,傳首詣宛」とあるから、王莽の首級が光武帝に伝わったのは確かだろうが、それから270年あまりを閲していたとは、驚くしかない。