名君の評価

中華の礼教は、徳治主義が建前なので、「瀆武の君」(武力を濫用する君主)は良くない君主だとされている。漢の武帝が、帝国の版図を倍に拡大しながら、名君と評価されることが少ないのは、結局そういうところに起因する。しかし唐の太宗や清の康熙帝など、漢の武帝より派手かもしれない「瀆武」が名君と評価されがちなのは、いまいち納得がいかない。清の乾隆が十全武功を誇ったのは、いわずもがな。君たち歴史家は、じつは戦争が大好きだろ?派手な国威発揚が好きだろ?通鑑見てたって、戦乱の時代のほうに力はいってるもんな。漢の文景の治も、宋の仁宗の時代も、民衆は幸せだったかもしれんが、血涌き肉躍る何かに欠けているもんな。周の武王の放伐を正当化するように、君たちは「瀆武」を正当化する。名君の評価は、実は歴史家のミーハー心と一体である。そのバイアスを喝破せよ!