『乾隆帝』

中野美代子乾隆帝 その政治の図像学』(文春新書)
18世紀、清の乾隆の盛世を築いた清高宗愛新覚羅弘暦君の伝記。かれが作らせた絵画や庭園からその政治的位相を読み解いていく。
皇帝在位60年、生涯に5万首の詩をものし、カスティリオーネらのパトロンとなった皇帝の文化面が、たくみに政治面に変換される。庭園を作らせ、名勝を選んでは絵を描かせ、自作の詩をものし、さらには詳細な自注を施すという帝の芸の細かさ。仮装と符丁を好んだ帝の趣味。熱河避暑山荘にラマ寺廟を築かせ、長春園に西洋楼を建てさせて帝が意図的に封じこめたものは何か……。
碩学の中野氏の説は圧巻ではあるものの、面白すぎてB級の臭いも紛々と漂ってくる。数字遊び・図式遊び的な符丁の解読は正直信用できない。しかし乾隆帝の面白皇帝ぶりを伝えるには、このくらい弾けていていいのかもしれない。
収録されている図像も多いので、オススメ。