グレッグ・イーガン『TAP』

グレッグ・イーガン著/山岸真訳『TAP』(河出書房新社
日本オリジナル短編集。イーガンの初期短編を中心に10編。河出の奇想コレクションということで、非SF作品もあり。
「新・口笛テスト」
忘れることのできない音楽をテレビCMに利用しようしたお話。オチが途中でなんとなく読めますが…。
「視覚」
認識の変容が意識の変容をもたらしてしまう。
「ユージーン」
ありうべき近未来の優生学への風刺。そしてパラドックスSF。すでに読んだ人はこれで笑いましょう。
「悪魔の移住」
人間外の高度な知性は癌細胞。
「散骨」
イーガンのホラー。奇妙な経緯で殺人の共犯者になってしまった主人公。
「銀炎」
ウイルスの仮想感染経路を追っているうちに、精神世界に入り込んでしまう話。
「自警団」
ホラーらしいけど、これもやっぱ風刺っぽい。夢に見る怪物を番犬にして道徳的選別をおこなわせようとする。
「要塞」
万物理論』のプロトタイプといってもかなり違う話。イーガンのリベラルなスタンスが確認できる。やつらとわれわれを峻別する二分法的発想を敷衍するなら、ここまでやってみせろ!的なイーガン流の挑発か。
「森の奥」
極限状況で交差するアイデンティティみたいな。
「TAP」
イーガン得意のインプラントをギミックにしたSF的ミステリー。真相と思われるものはラストにかけて畳みかけるように一転二転する。