『太陽の簒奪者』『沈黙のフライバイ』

野尻抱介を続けて読んでみた。ネタバレしないことには、どうもまともに感想も言えないみたいだから、以下は容赦なくバらす。
『太陽の簒奪者』(ハヤカワ文庫)
ファースト・コンタクトもの。話はとても面白いんだけど、結論から言うとビルダーたちの無関心の理屈は納得できない。どう考えても、ソラリス的な交じわらなさとはレベルが異なるような気がする。ダイソン球を構築するほどのエネルギーを消費する高度な知性が、思索している内容も下らなければ、あげく地球人類まったく無視ですか?
まあ、俺も宇宙を創造した「神」がいたとして、人類に特異な関心を向けることはないだろうと考える人間だけど、なんかこれは違うでしょ。地球人類だって蠅や蚊とんぼが目の前をちらついていたら何らかの対応を取るだろうし、決して主流にはなれなくても蟻の社会を研究する学者もウイルスの振る舞いを研究する学者もいるわけよ。高次のものが低次のものに全く関心を持たず、宇宙を開発していくなんて考えられない。
俺たちはイデアの世界で遊んでいるから、自然や自然に適応した生物には興味ありません!ですか…(脱力)。なんかソラリスよりも幼年期の終わりなのかも知れないなあ。そんな生物がいくら高度化してもダイソン球は必要ないよ。
ビルダーたちに贈りたい言葉:「思いて学ばざれば則ち殆(あや)うし!」。低次かもしれないけど、地球人類たちの情報リソースはちゃんと回収しておこうね。
あと、最後の最後のオチ。そういやこんなやついたっけ、忘れてたよ(笑)。

『沈黙のフライバイ』(ハヤカワ文庫)
短編5編。
「沈黙のフライバイ」…ファースト・コンタクトもの。1グラムの恒星間探査機を作って他星系に送ろうというアイデアの発展。
「轍の先にあるもの」…小惑星エロスの蛇行谷。軌道エレベータの実現。
「片道切符」…環境テロリストが火星に。
ゆりかごから墓場まで」…完全に自給自足できるスーツ。
「大風呂敷と蜘蛛の糸」…凧を揚げて宇宙へ。