皇帝たちの異形

漢の高祖劉邦の左の股に七十二個のほくろがあったり、晋の宣帝司馬懿の首が百八十度回ったり、唐の高祖李淵の乳首が三つあったり、中華皇帝たちの伝記には、体つきからして常人とは違うのだというのだという話が多い。始皇帝からして「鼻が高く目が長く、胸は摯鳥のように突き出て、声は豺のよう」であるし。
同じようなパターンが踏襲されることもあり、蜀漢の先主劉備南朝陳の高祖陳覇先は、「手を垂らすと膝まで届く」。
北魏の道武帝拓跋珪は生まれたときの体重が人の倍だし、遼の太祖耶律阿保機は生まれたときに三歳児なみの体である。
皇帝を産んだ母親が不思議な夢を見たとか、生まれたとき不思議な光につつまれたとかの出生譚は、数が多いのですべてを挙げる気にもならない。
その出生譚や異形によって、皇帝たちを選民視し、神聖視する記述であり、あまりまともに受け取ることはできない。