『スロー・バード』

イアン・ワトソン『スロー・バード』(ハヤカワ文庫)
SF短編14編。良作多し。
「銀座の恋の物語」−倦怠期の夫婦ふたり、暗示機械の性格変容によって築かれる新しい関係。
「我が魂は金魚鉢の中を泳ぎ」−展開はまさに題のとおり。シュールで滑稽。
「絶壁に暮らす人々」−奇妙な生活と文化、そして世界の変容。
「大西洋横断大遠泳」−冷戦時代の発想による滑稽劇。
「超低速時間移行機」−××にジャンプするために同じだけ○○に逆行しなければならない装置。
「知識のミルク」−マルチバースからユニバースへ世界を収縮させる神話。
「バビロンの記憶」−人工古代都市への訪問。
「寒冷の女王」−《冷戦》の行きついた先。
「世界の広さ」−人類にとって世界は狭すぎるということ。
「ぽんと開けよう、カロピー」−夢の中のCMとその食品にハマってしまった男の悲劇。
「アイダホがダイヴしたとき」−砂漠の下に埋められた潜水艦。
「二〇八〇年世界SF大会レポート」−退行した世界のSF大会
ジョーンの世界」−誕生日に世界をプレゼントされた少女の話。
「スロー・バード」−空中をゆっくりと飛び、消えてはまた現れるスロー・バード。

文明的に退行した世界や下り坂の世界を描き、そこに奇妙な希望を見出すような作品が多かったという印象。