キリン伝来考

ベルトルト・ラウファー『キリン伝来考』(ハヤカワ文庫)第5章 中国

李石の編になる『續博物志』は、十二世紀半ばのものだが、明らかにキリンについて述べていると思われる、中国で最も古い文の一つを含んでいる──「弼琶囉po-pa-liの国[ベルベラ、アデン湾のソマリ沿岸]には、ラクダ・ウシ(駝牛)という名の不思議な動物がいる。その皮は、ヒョウの皮に似ており、その蹄は雄牛のそれであるが、しかし、その動物には背中にこぶがない。首の長さが九尺、胴体の高さが一〇尺もある。」

キリンに関する第二の言及は、一二二五年に、趙汝适が書いた『諸蕃志』の中に見られる。

宋代にキリンの記録があった。

一四一四年(明の世祖の治世下、永楽一二年)、ベンガル王、サイフッディン〔榜葛利王、賽佛丁〕の派遣した使節が中国を訪問した際、貢物としてキリンと名産の馬がもたらされた。礼部〔儀典部〕は永楽帝に、祝賀の勅語を賜るようにと奏上し、キリンは、麒麟と命名された。

キリンがはじめて中国に来て、キリンが麒麟と呼ばれるようになるのは、永楽帝の時代。