石炭の利用

中国の伝世史料では、石炭のことを「石涅」、「石墨」などとも呼んでいた。
山海経』西山経の「女牀之山, 其陽多赤銅, 其陰多石涅」の石涅は石炭のことともいわれている。
「石炭」の語そのものも、『隋書』巻69王劭伝に「今溫酒及炙肉,用石炭、柴火、竹火、草火、麻荄火,氣味各不同」と見える。
1958年に発見された河南省鞏義市鉄生溝の漢代製鉄遺跡では、石炭の使用の痕跡がみられる。
漢・唐のあいだも石炭は一部で利用されていたと思われる。中国社会において石炭の利用がさかんになったのは、宋代以降のことである。
石炭の利用を技術的・経済的発展とみる見方も当然あるが、一方では華北における森林資源の枯渇という事情がそれをうながしたとみる環境史の見方もあることを付記しておく。