『ノモンハン戦争』

田中克彦ノモンハン戦争 モンゴルと満洲国』(岩波新書
モンゴル側の視点に寄りそったノモンハン事件(ハルハ河戦争)の書。ノモンハンそのものよりも、モンゴル近代史として読んだほうがいいかもしれない。モンゴル人民共和国のハルハ、満洲国のバルガ、ソビエト連邦ブリヤートに分断されたモンゴル。ソ連や日本といった大国の政治に翻弄されながらも、交流と統合をもとめて抵抗した人物たちの群像が生々しい。戦争に勝った負けたの話は、この書ではいささか狭小に映る。満洲国もソ連もいまやなく、モンゴル人民共和国モンゴル国と改まった現今でも、分断の構図はつづいている。現代に通じる近代がここにある。そして辻政信が最後に少しだけ顔を見せるのであった。

ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国 (岩波新書)

ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国 (岩波新書)