『火星縦断』

G・A・ランディス『火星縦断』(ハヤカワ文庫)
火星サバイバルSF。だいぶ寝かせておいたが、いざ読み出すとすっと読めた小説。
2028年、第三次有人火星探査隊は火星に降り立った。しかし帰還船の事故のため、予定されていた通常の方法では地球への帰還が不可能となってしまう。隊員たちは地球への帰還のために、南半球から北極にいたる苛酷な火星縦断の旅に出発した…というストーリー。
登場する隊員たちひとりひとりは、それぞれ過去の秘密や虚偽の経歴をかかえた人物たちで、その事実が作中少しずつ明らかにされていく。はたして誰が生き残るのか、ある人物を殺害した(?)犯人は誰か、サスペンス風味の部分も感じられる。
作者が現役NASA研究者で、最新のデータを惜しみなく使ってることも、話に質感と奥行きをもたらしている。マリネリス峡谷の光景は雄大だ。僕らも火星に行ったらオキシドールにやられて金髪になっちゃうのかもしれない。
さて、お約束の火星生物は…、ネタバレが過ぎるので秘密にしておく。