魔法少女の王道

話題の『魔法少女まどか☆マギカ』ですが、いやあ面白いですね。6話や8話あたりは物語の毒に当てられすぎて悶絶しておりました。物語が終わりを迎えないうちに拙いながら色々予想しておきましょう。大外れしたら笑って流していただけたら幸いです。
1.「円の中心」の魔法
まず主人公の鹿目まどかですが、ファンシーな少女趣味の持ち主で、激しい物語の展開を支えるにはあまりにも我が弱く、今のところ状況にただ流されて振り回されているだけに見えます。自分で自分のことを「何の取り柄もない人間」と言ってるわけですが、キャラ立ち自体が何とはなしに空虚な人物です。「鹿目まどか(かなめまどか)」という姓名に別の漢字を当てると、「要」と「円」なわけで、「円の中心」を示唆するネーミングです。円の中が「うろ」で「うつつ」で「空」で「虚」で「洞」なのは理の当然です。逆に言うと空虚な器には何でも容れることができるわけで、大器や可能性の象徴でもあります。(『三国志演義』の劉備や『水滸伝』の宋江のような「虚なる中心」(c)井波律子なわけですね。)ところで、まどかの魔法少女としての武器は「弓」であるわけですが、弓は円の弧を弦で切り取った形態です。弓はまどか(円)の一部なわけです。(別に上手いこと言ってるわけじゃないです。虚とか弦とか言ってても。)
また弓は矢でもって目標をピンポイントに射貫く武器です。その目標とは何かと考えると、それは魔女のグリーフシードしかないと思われます。魔法少女→魔女の不可逆性が明らかになったいま、魔女化した魔法少女を救済する曙光はむしろ魔法少女の戦利品と思われてきたグリーフシードを魔女(=魔法少女)の肉体を傷つけないで破壊、もしくは再構築することにあるかもしれません。
2.魔法少女の黒猫
時間操作の能力が明らかになった暁美ほむらですが、まだまだ謎が多い。物語の核心に迫る情報を多く抱え込んでいるのに、秘密を開示しないがために登場人物たちからの誤解を招きまくっています。まどかへの傾倒があまりに激しいのも、彼女の性格をアンバランスなものにしています。おそらくはまどかにとっての未来、ほむらにとっての体験的過去にふたりは出会っています。「別の時間軸」のほむらの体験的過去話もこれからあるはずです。
彼女は過去への時間移動を繰り返すことで、未来におけるなんらかの破滅を回避しようと画策しています。彼女のいう「統計」が彼女の時間移動の繰り返しの多さを暗示していますし、繰り返しの体験が全く同一ではない(平行世界/多世界解釈ことをも示しています。
ところでOPの黒猫がほむらなのではという説が出てますね。この説をとる場合、ほむらにとっての経験的過去に黒猫であったのか、未来に黒猫となるのかによって話が違ってきます。さらには、黒猫ほむらが魔法少女のまどかの相棒であるのか、魔女まどかの使い魔であるのかで、方向性まで変わってきます。猫であるがゆえに独立独歩、頭はよいが視野狭窄、コミュニケーションに重きを置かないマイペースというのも面白そうではあります……が、ほむら黒猫説はミスリードのような気もしてきました。
3.魔剣は魂をすするか
美樹さやかについては、僕は以前こういう予想をしているのですが、多少の修正が必要なようです。
http://b.hatena.ne.jp/nagaichi/20110223#bookmark-31481829
まずさやかラスボス説はなさそうですね。さやかをラスボスにするには8話の展開が早すぎました。ただ思い人(上條)も親友(仁美)も斬り殺すようなどうしようもなく救われない展開はないと予想していたのはどうやら当たりそうです。じつは僕は8話でほっとしたwのでした。
この物語は全く救いのないダーク・ファンタジーではなく、しっかりしたクライマックスをもったむしろ王道に近いところに着地すると予想します。最後で持ち上げなければ、話をここまで暗く落としてきた意味がありません。最後で奈落につき落とすのであれば、中盤はもっと持ち上げなければなりません。
こうした観点から、むしろ物語による救済に近いのは、中盤で正しく間違えたさやかのほうであると考えます。そのためにはさやかは殺しても、殺されてもいけないですね。(といいながら、最後に大団円と見せかけて、最後の最後に本当の奈落に突き落とすという手法もあるので、12話途中で持ち上がりすぎたらむしろ要警戒ですな)
4.「時よ止まれ、汝はいかにも美しい」
あとはあまり語るべきことを持たない人物たちについてまとめてみます(われながらひどい)
巴マミは中学3年生のわりに大人すぎます。人格的に完成されすぎているので、首以外にいじりようがないですね(やっぱりひどい)。気になるところは、12話での復活があるかどうかです。
佐倉杏子については、4−6話であそこまで印象を落としておいて、7話以降の印象が劇的に改善するのは少しあざとすぎます。さやかとセットでいいキャラですね。9話で格好よく退場するのでしょうけど。杏子=シャルロット説がちょっと気になります。時間の前後が合いませんが、「赤/お菓子好き」という平仄は合ってる…のでしょうか。
キュゥべえについては、彼は彼の論理と利害で動いてるだけなので、それを「悪」と呼ぶならそれはなぜなのか?を考えたりします。この物語の魔法少女のしくみは、願望が呪いを生み出すおぞましいシステムであり、キュゥべえがその水先案内人だからでしょうか。魔法少女となったまどかがキュゥべえ魔改造していい子に……なったりはしないでしょうね。
5.機械仕掛けの神は笑う
さて、物語の構成上、どこかで必ず1話冒頭に戻ってくるはずですが、当初の予想よりは意外と早そうです。魔法少女となるまどかの「願い」はなんでしょうか。「ただなりたいってだけじゃダメなのかな」というかつての台詞から、願いはないという可能性もありますね。願いがなければ、呪いも生みようのないシステムのはずなので。少女趣味が世界を救うなら、それは本当に王道の魔法少女です。
最後ですが、必ずやまどかの12話にはなんらかの救済が用意されているでしょう。願わくばそれが予想を越えるものでありますように。