崖の上のポニョ

リサの運転が乱暴なのにはわけがある。(さかさまつげ)

さすがに大ヒット中の映画はというか宮崎アニメはというか、いろんな感想が読めておもしろい。中でも、はああ…と思ったのが「リサの運転が乱暴すぎて人格を疑う、感情移入できない」的な感想。や、自分はほぼ気にならなくて、唯一、大波の寄せてくるドック*1を渡っちゃうところが、ちょっと無理してるかな、と感じたくらい。あとは、このかあちゃんは走り屋かよ!?と単純に盛り上がってました。「法律違反のオンパレード」「人としての見識を疑いたくなります」といった真面目な感想を読んじゃった日には、オレの見識も疑った方が良いのかもなあ…とか。「子を持つ親」として。でもチャイルドシートはちゃんと用意してたよね…。

いるんですね、そういう感想をもつ人。きっとラピュタの「ナイフ、ランプかばんに詰めこんで〜♪」にも文句を言う人に違いないですよ、子どもにそんな危ないもの持たせるなとか言って…(偏見;)。そういえばおもちゃの船で航行する場面で、ポニョの背負ったリュックの中身も楽しそうだったなあ…。
未来少年コナン」でコナンが壁を走るシーンみたいな、ちょっとありえない状況のアクションを楽しく描くというのは、宮崎駿監督のむかしっからの売りなわけで、同じシーンを観てそれを楽しめない人がいる…のな、やっぱ。

『崖の上のポニョ』55点(100点満点中)(超映画批評)

これが何ともおさまりが悪く、押し寄せる波やあふれる古代魚、落ちてくる月、ポニョが過剰反応する謎のトンネル、老人ホームの人々など、死をイメージさせる要素があまりに多すぎて、個人的には異様な鑑賞後感を味わう羽目になった。「神経症の時代に向けて作った」というが、むしろこの作品こそがパラノイア的で気味が悪い。絵本調のパステルカラーによる妙に明るい雰囲気とのギャップがその思いに輪をかける。

これは辛口。っていうか、記号的に裁断して批評しなきゃいけない人はたいへんだなあ…。ポニョのキモかわいさと、お話の底抜けの明るさを楽しめず、記号でしか見られないから、そういう感想になるんじゃないでしょうか?いや俺は「ポ=ニョ、ポ=ニョ、ダゴンとハイドラの子、いと暗き海の底の都ルルイエからやってきた…」みたいなキモさを期待して観にいったら、それほどでもなかったんで。異質感やギャップについては、それこそ子ども向けに抑えてあるなと感じたんですけど。海って、本当はもっとキモいものでしょ。

同じものを観てるはずですが、人間の感性って多様だなあと。いやま、多様なのはいいことですよ、多様性こそ俺らの生存戦略ですから。共感を強要することには意味がない。