ナイロビの蜂

ネタバレ大。
純愛物語と社会派サスペンスの融合。表面的には悲劇にはじまり悲劇に終わるが、その実、主人公の求めたものは劇中で達成されている。
主人公である外交官の夫と正義感の強い活動家肌の妻。妻の死から物語ははじまる。妻の追い求めたものは何だったのか、回想をまじえ追いかけるうちに、製薬会社の新薬治験をめぐる利権と陰謀に巻き込まれていく。
ガーデニングが趣味で社会問題には関心をもたず、線が細すぎるとしか見えない主人公が、死せる妻をより深く理解していくうちに、大胆な行動力を発揮し、しだいに格好よくなっていくところは魅せる。「今ひとりを助けられる」という妻の善意の論理を「たくさんいるんだ」とかつて否定した主人公が、同じ論法で内戦に追われた子どもを助けようとする。そうした彼に死せる妻は寄り添い、スキャンダルは暴かれ、団円を迎える。
ひとつの主題として、慈善事業にみえるものが、アフリカの人々を食い物にしている構図が提示される。
しかし一方で、アフリカ群衆は無辜の被害者に甘んずることなく、猥雑でしたたかでたくましい。そしてアフリカの大地は雄大で美しいのだ。