曹操の墓キタ━まだつづくんじゃよ

このへんのさらにつづきです。
曹操の墓発見とのニュースの興奮の余燼は冷めやらず、ますますヒートアップしています。
河南省文物局が河南省安陽県西高穴村の今回の墓を曹操の墓と断定したことに対して、批判の先陣を切ったのは、人民大学国学院副院長の袁済喜氏(魏晋南北朝文学)でした。

曹操の墓>現地当局「大発見!」、北京の学者「あやしい」(サーチナ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=1229&f=national_1229_008.shtml

袁氏は、「墳墓は(歴史上)何度も盗掘の被害にあっており、残されている証拠物は少ない。類似の墓で発見されている金縷玉衣などの“動かぬ証拠”もなかった」と指摘。

河南省文物局が「最大の証拠」とした「魏武王」の文字が刻まれている石板についても「本物か偽物か、鑑定は難しい。慎重に判断すべきだ」と主張。同石板は、警察が2005年以降に盗掘者を逮捕した際の押収物であることから「万一、盗掘者が偽造した物だったら、どういうことになる?」と述べた。

袁氏によると、河南省文物局は「急ぎすぎ」で、まじめさ・慎重さに欠ける。「可能性が高い」、「ほぼ肯定された」などの表現で発表したのなら問題ないが、「断定」など人目を引く言葉を使い大騒ぎすべきでなかったという。

<続報>「曹操の墓」は有力な証拠に欠ける=目立つ報道の先走り―中国人研究者(レコードチャイナ)
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=38386

一方、袁院長は問題の墳墓は数十回もの盗掘を受けたものであり、残された資料は少ないと指摘。盗掘者が中に入り込んでいる以上、証拠とされている副葬品についても後の時代に誰かが残した可能性もあり、「真贋の艦艇(ママ)は難しい」と話している。

また袁院長は、数年前にも南京市定林寺で曹操の墓発見という話があったが、研究の結果、否定されたことを紹介した。今回の曹操の墓についても、誇大に報道しようという動きばかりが先走っているが、真の歴史研究は事実に基づく必要があり、誇大報道からは距離をおかなければならないと批判した。

曹操の陵墓は本物? 疑問の声続々(MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/china/091229/chn0912291728004-n1.htm

しかし、袁済喜教授は「陵墓はこれまで何度も開けられたことがあると報道されており、誰かが曹操の陵墓に見せかけるために意図的に副葬品を入れた可能性も否定できない。検証しなければならないことはまだ沢山あるのに、こんなに早く結論を出すべきではない」としている。

考古学者である復旦大学の高蒙河教授も中国紙「新民晩報」に、「発見された遺骨を曹操本人のものと断定するには、曹操の子孫を見つけDNA鑑定をするなど科学的な検証が必要だ」と語り、文物局の手法を「安易だ」と批判した。

インターネット上でも「曹操の墓にしては安物の副葬品が多すぎる」「戦乱の時代を生きた曹操なのに、盗掘を防ぐ仕掛けがないのはおかしい」などの書き込みが多い。陝西省当局が2007年秋、「野生の華南トラを43年ぶりに発見」として発表した写真が、実は偽物だった例を引き合いに、「地元当局が観光客を誘致するためにつくった墓ではないか」との声すらある。

また『曹操墓研究』の専著ももつ河北省邯鄲歴史学会会長の劉心長氏による批判があります。
http://news.sina.com.cn/c/2009-12-29/174619362448.shtml
劉心長氏による疑問をざっと要約すると、
1.「魏武王常所用挌虎大戟」「魏武王常所用挌虎大刀」銘について、埋葬後に「武王」銘を「武皇帝」銘に改める機会があったと思われるのに、改めていないのはなぜか。
2.盗掘を防ぐしかけがなかったのはなぜか。
3.「金玉珍宝をたくわえるな」、「金珥珠玉銅鉄の物をいっさい入れるな」と遺令しながら、今回の墓の中から出土した250器物の中に、なぜ金・銀・銅・鉄などの金属物件や、ひどいのは瑪瑙・玉石などの珠宝があったのか。
といったところです。
劉心長氏は別口で曹操の墓を探していた人らしいですね。
http://xiaoq.exblog.jp/10348875/
http://xiaoq.exblog.jp/10362161/
http://xiaoq.exblog.jp/10447809/
http://xiaoq.exblog.jp/10456693/

かくして「曹操の墓と確認できたよ」派と「断定は時期尚早だよ」派による争論が展開されています。
http://news.sina.com.cn/c/2009-12-30/031719363847.shtml
http://news.iqilu.com/china/gedi/2009/1230/152873.html
http://www.chinanews.com.cn/cul/news/2009/12-30/2047181.shtml

曹操は現在の安徽省亳州市の出身ということで、安徽省の学者さんもいろいろ発言されてます。
http://news.xinmin.cn/rollnews/2009/12/30/3200508.html

学者たちの色分けができたようです。
http://www.chinanews.com.cn/cul/news/2009/12-30/2045799.shtml
曹操の墓と確認できたよ」派に、王立群氏(河南大学文学院教授、中国『史記』研究会常務理事)・盛巽昌氏(上海社会科学院研究員、魏晋南北朝研究)。懐疑派に、劉心長氏(前出)・袁済喜氏(前出)・章義和氏(華東師大教授)といった面々。王立群氏はテレビの「百家講壇」に出たことで、けっこう知名度のある人ですね。

曹操の墓と確認できたよ」派の研究者による疑問に答えます系いろいろ。
http://news.xinmin.cn/rollnews/2009/12/30/3203207.html
http://news.sina.com.cn/c/2009-12-30/035116853235s.shtml
http://news.sina.com.cn/c/2009-12-30/040719364223.shtml
http://news.artxun.com/caocaomu-1534-7666757.shtml

7大疑問に答えてみました。
http://henan.sina.com.cn/news/2009-12-30/143811254.html

DNA鑑定はやるそうです。
http://www.ccvic.com/minsheng/rexian/20091230/84021.shtml
追記:頭骨のDNA鑑定は技術的に一定の難度があるという話が出てます。
http://news.sina.com.cn/c/2010-01-01/055916864382s.shtml
http://news.sina.com.cn/c/2010-01-01/094119381679.shtml

西高穴村2号墓(今回の「曹操の墓」)に引き続いて一時停止されていた1号墓(規模は小さい)の発掘を再開するそうです。
http://news.xinmin.cn/rollnews/2009/12/30/3209656.html