腰帶十圍

太っちょさんを表す漢籍での決まり表現。直訳すると「腰帯が十囲あった」。「囲」は、この場合は長さの単位で五寸に相当する。時代によって尺貫は異なるので一概にいえないが、十囲は百数十センチということになる。

『晋書』巻50列伝20の庾敳
『晋書』巻118戴記18の尹緯
『晋書』巻130戴記30の赫連勃勃
宋書』巻68列伝28の南郡王劉義宣
梁書』巻8列伝2の昭明太子蕭統
梁書』巻22列伝16の蕭嗣
梁書』巻44列伝38の安陸王蕭大春
『魏書』巻14列伝2の東陽王元丕・淮南王元他・淮陽王尉元
『魏書』巻16列伝4の元霄
『魏書』巻19下列伝7下の元鸞
などなど、面倒くさくなってきたので以下省くが、「腰帶十圍」とされる人はけっこういるのである。
正史では『晋書』から『旧唐書』まで見られ、それより後には見られない。安禄山あたりは、「腹垂過膝、重三百三十斤、毎行以肩膊左右擡挽其身」(『旧唐書』)「晩益肥、腹緩及膝、奮兩肩若挽牽者乃能行」(『新唐書』)のような表現となっており、「腰帶十圍」は使われていない。おそらく「腰帶十圍」は初唐あたりをピークにして、その前後に使われた中世的な表現なのだろう。そして必ずしもけなした表現ではないと考えられる。「容貌魁偉」や「容貌壯偉」といった顔かたちの立派さとセットになっている場合が多いからだ。

三国志』巻18魏書18の許褚伝では「腰大十圍」、『元史』巻120列伝7の吾也而伝で同じく「腰大十圍」、『明史』巻249列伝137の朱燮元伝では「腹大十圍」という微妙に異なる表現が使われていることも附記しておく。